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深読み 『ベロ出しチョンマ』!


★このページの初出 2020年2月22日
★このページの最終更新日 2020年2月22日

1.第1章の必要性

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『ベロ出しチョンマ』には、作者斎藤隆介が得意の方言的語り口が使われていません。

それどころか、非常に冷静な説明文章で始まります。

原文を見ていただくと分かりやすいので、冒頭第1章の全てを引用させて頂きます。

         
 千葉の花和(はなわ)村に「ベロ出しチョンマ」というオモチャがある。チョンマは
長松(ちょうまつ)がなまったもの。このトンマな人形の名前である。
 人形は両手をひろげて十の字の形に立っている。そして背中の輪をひくと
眉毛(まゆげ)が「ハ」の字に下がってベロッと(した)を出す。見れば誰でも思わず吹き出さずにはいられない。

これだけです。
非常に短い章です。

しかも第2章以降を読むと分かるのですが、この章を冒頭に置いていなくても、話を進めて行くことができます

むしろ第2章から、得意の方言的口調で始めた方が、物語に入って行きやすいと思えるぐらいです。

ではなぜ作者は敢えてこの章を冒頭に置き、方言的語り口を使わなかったのでしょうか?

管理人が考える理由を挙げてみます。

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<目次>

1.現実感の醸成へ
2.物語のトーンの決定へ
3.客観性の確保へ
4.普遍性の表出へ

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この章の要約


短い第1章は、
「江戸に近い村で、実際にあった話という現実感を持たせるため」
「物語の明るいトーンを作り、暗い話を読みたくないという読者の心の壁を崩すため」
「冷静に語ることにより、客観性と現在性を確保するため」
「普遍性を表出するため」
の4つを主な理由にして、作者によって綿密に計算されて冒頭に配置されている。


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