★このページの初出 2020年2月22日
★このページの最終更新日 2020年2月22日
8.細かな配慮
1.優しく明るい名前
<ポイント>
植物系の優しく明るい名前を藤五郎一家につけることにより、作品に感情移入しやすくし、ストーリーの重さを軽減している。 |
『ベロ出しチョンマ』には個人名が木元一家の4つしか出て来ません。
すなわち、主人公長松。
父親藤五郎。妻ふじ。
そして長松の妹ウメです。
長松一家にしか名前をつけないことで、読者が長松一家に親近感を覚えるように工夫しているのです。
人は固有の名前がある方が、「男」などの名詞や「A」などアルファベットや「△」などの記号より親近感を覚えるからです。
そして、長松一家の名前の特長は、いずれも植物と思われる文字が入っていることです。
長松は、「松」。藤五郎とふじは「藤」。ウメは「梅」です。
植物というのは、美しく大人しい雰囲気が漂い、名前としてはとても優しいものです。
例えば、藤五郎一家の名前を次のように書きに変えるとどうでしょうか?
長松→鬼虫
藤五郎→乱太郎
ふじ→うじ
ウメ→ウソ
どうでしょう? なんだか粗暴で悪そうで、長松と同じ行為をしても裏がありそうな気がして来ませんでしょうか(笑)。
このように名前の付け方で作品の印象は変わってしまいます。
作者の斎藤隆介はそれをよく分かっていて、木元一家に植物系の優しい名前をつけ、読者が感情移入しやすいよう工夫しているのです。
もう1つの特長として、長松の「松」、ウメの「梅」は「松竹梅」という言葉にも入っている明るくめでたい名前です。
また母親の「ふじ」は富士ともとれますので、富士山のなんとなく天晴れな明るいイメージが漂います。
『ベロ出しチョンマ』はストーリー自体が一見暗いので、個人名には優しく明るい名前をつけて、読者の心の負担を軽減しているのだと思われます。
物語の重々しい雰囲気を、植物系の優しい名前で和らげているのです。
今回、「松」「梅」「藤」を広辞苑第六版で調べてみたのですが、いずれも家紋等に使われる紋所にも使われているようなので、もしかしたら作者は名前に「家」的な意味を含ませたのかもしれません。
しかし、管理人は紋所の専門家でもないので、ここでは深く追求しないことにします。
いずれにしても、植物系の名前をつけることにより、読者が物語に入りやすく、ストーリーの重さを軽減していることは確かだと考えられます。
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