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深読み 『ベロ出しチョンマ』!


★このページの初出 2020年2月22日
★このページの最終更新日 2020年2月22日

6.長松はなぜ父親を責めなかったのか?

1.長松と父親藤五郎との関係を示す原文
<ポイント>
作者は長松と父親の関係を原文には書いていない
この章の要約


まずは長松と父親藤五郎とは、どんな関係だったのかを原文で確認してみたいと思います。

二人の関係を示すと思われる文章を抜粋してみます。


 けれど長松は眠れない。子供でも、もう十二だから、少しは父ちゃん母ちゃんや村の(しゅう)の心配事が分かる。
(中略)
 ある朝起きてみたら父ちゃんがいなかった。母ちゃんに聞いたら
「知ンねえ。父ちゃんのいねえこと、誰にも言うんじゃねド。わかったっぺ!」
 と
(こわ)い顔をして言った。父ちゃんは帰って来なかった。
(中略)※以下は長松達が役人に捕まる場面(管理人注)
 (前略)ウメがワッと
()き出し、長松は役人をにらんでやった。父ちゃんは江戸に行ったんだナ! 将軍さまにあったんだ!
(中略)※以下は長松一家が処刑される場面(管理人注)
 長松は
刑場(けいじょう)で初めて父ちゃんを見た。父ちゃんは長松たちと同じように白い着物を着せられて、もう高いハリツケ柱にしばられていた。
「父ちゃん!」
 と
長松(ちょうまつ)が叫ぶと、ヒゲぼうぼうの父ちゃんが高い所でニコッと(わら)った。とってもやさしい目だった。


長松と父親の関係を示す文章は、これぐらいです。

これらの原文で分かるのは、
作者は直接長松と父親の関係を書いていないことです。

例えば
「長松の父親藤五郎は、村人思いの働き者の名主で、皆から慕われていた。そんな父ちゃんを長松も誇りに思っていた」
などという文章を入れておけば、二人の関係は分かりやすく、物語の進行もスムーズではなかったかと思われます。

しかし、
作者は敢えて父親と長松の関係を書きませんでした

なぜでしょうか?
作者はなぜ二人の関係を書かなかったのでしょうか?

以降で、その謎を解きながら二人の関係をあぶり出して行きたいと思います。


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【この章の要約】
原文には長松と父親の関係は明記されていない。

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