★このページの初出 2020年2月22日
★このページの最終更新日 2020年4月4日
13.地域起こしに
1.観光資源化はやり方次第
『ベロ出しチョンマ』は、「千葉の花和村」が舞台です。
原文では
『花和村の木元神社の縁日では、今でも「ベロ出しチョンマ」を売っている。』
となっています。
では今実際に千葉県で、「ベロ出しチョンマ」の人形は買えるでしょうか?
もちろん買えません。
なぜなら、花和村も「ベロ出しチョンマ」人形も、架空の村の架空の人形のままだからです。
『八郎』と『三コ』『カッパの笛』の舞台は秋田です。
では秋田県に行けば、八郎や三コやカッパに会えるでしょうか?
もちろん会えません。
なぜなら、せっかく物語の舞台になっているのに、地域の資産として活用していないからです。
また作者斎藤隆介は東京生まれで、秋田にも疎開もしていたようですが、両地域で生家とか寄宿していた家とかを訪ねることはできるでしょうか?
もちろんできません。
なぜなら、斉藤隆介という作家で人を呼ぼうとしていないからです。
では、見事な画を描いた滝平次郎はどうでしょうか?
生まれた茨城県に行けば生家が見られるでしょうか?
どこかで木版画や切り絵をまとめて見たり体験したりすることができるでしょうか?
もちろんできません。
なぜなら、滝平次郎で地域を盛り上げようと誰も思っていないからです。
何が言いたいかと言うと、
「なぜ『ベロ出しチョンマ』や斉藤隆介、滝平次郎を地域起こしに活用しないのだろうか?」
ということです。
例えば、『坊ちゃん』で町起こしをしている松山市。
宮沢賢治で地域起こしをしている岩手県。
水木しげるで町起こしをしている境港市……日本には作家や作品を観光資源にしている地域があります。
松山市などは、『坊ちゃん』の作者夏目漱石がいたのは1年程度ですし、作者は松山市にそんなに良い印象を持っていなかった雰囲気があるのに、堂々と『坊ちゃん』の街として人を呼んでいるわけです。
境港市も、水木しげるが生まれたのは確かに境港市だったかもしれませんが、長く住んで鬼太郎を産み出したのは三鷹市なわけです。
しかし水木しげるといえば、境港市というイメージの方が強烈です。
要は、やり方次第で観光資源化できるわけです。
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2.有名にするのは自分達
作家や作品で地域おこしをと書くと、夏目漱石や宮沢賢治や水木しげるは国民的作家だから成功しているのだ、という意見を言われる方があると思います。
それほどメジャーではない斉藤隆介や『ベロ出しチョンマ』や滝平次郎では、インパクトが弱いから無理なのではないか、という意見です。
一言でいうと、最初から有名だから人が呼べるのだという意見です。
一理ありそうな考え方ですが、管理人は少し違った考えを持っています。
それは、有名にすることは自分達でできるということです。
夏目漱石や宮沢賢治、水木しげるも登場したときから国民的作家だったわけではありません。
同時代や後世の人が、国民的作家にしたから国民的作家なのです。
つまり、斉藤隆介や『ベロ出しチョンマ』や滝平次郎がいまいちネームバリューがないと考えるのなら、自分達で大作家に仕立て上げればいいのです。
こう書くと、巨額な予算を使って宣伝するとか、記念館的な箱物と作るとか、そういったことがすぐに浮かんで心が折れそうになりますが、現在はもっと気軽でローコストな方法があります。
例えばインターネット上にファンのコミュニティを作ってSNSで拡散するとか、著作権者との合意を元に一部作品を各国語に訳して全世界の人が無料で見られるようにアップするとか、素人演劇を行いYouTube等にアップするとか、インターネットを使ってアイデアを出せば低予算で効果的な宣伝が可能になります。
そういう地道な活動をずっと続けて行くと、海外から
「素晴らしい作品だ」
と言われたり、何かの拍子にマスメディアに取り上げられたりして、有名になって行くかもしれないのです。
宣伝するもののポテンシャルが高くて、真面目に誰かに伝えようとさえすれば、ちゃんと見る側が評価し、有名になって行く可能性はとても高いと思います。
『ベロ出しチョンマ』も斉藤隆介も、滝平次郎も十分すぎる程のポテンシャルがあると管理人は思います。
もちろんすぐには効果は出ないかもしれませんし、成功するかどうかも分かりません。
しかし何もしなければ、何も生まれません。
例えば、千葉県のどこかに朽ち果てつつある祠があれば、それを木元神社にして、毎月1日を縁日にして『ベロ出しチョンマ』人形や斉藤隆介の作品を売ってみてもいいのです。
そんな祠がなければ、新たに作ってもいいのです。
田沢湖付近で、和笛の教室を作って地元の人に教えたり、観光客に体験してもらってもいいのです。
滝平次郎の木版画や切り絵を目指した教室を作って、地元の名産にしたり観光客に体験してもらってもいいのです。
真剣に考えれば、継続的に人を呼べる仕組みはあると思うのです。
縁のある地域の方は、地域活性化する資源として活用してみるのはいかがでしょうか?
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3.もう文学者として評価しても良いのでは
斎藤隆介が地域起こしに活用されていない原因として、管理人は知りませんが、もしかしたら斉藤隆介の生前の政治的信条や宗教的信条が、為政者にとっては面白いものではなく、誰も評価したがらないということがあるかもしれません。
もし仮にそうだとしても、死後30年以上経っているのです。
もう一人の「作家」として、文学的に評価して行ってもよいのではないでしょうか。
作品集『ベロ出しチョンマ』が読まれ続ける理由でも書かせて頂きましたが、作品集『ベロ出しチョンマ』は普遍性が高く、これからも読まれ続けるだろう大傑作です。
またこの作品集の中から、『モチモチの木』などのロングセラーの絵本が何冊も出ています。
このことだけでも、文学者として高く評価して良いと管理人は思います。
近代以降「作家」は沢山存在して来ましたが、没後30年以上経っても作品集が読まれ続けている作家と言うのは、凄く少ないと思います。
「文豪」とまでは言わなくても、優れた作品を書いた作家として位置付けても良いと思うのです。
観光資源化は最初に行った者がかなり有利です。
人気が出たからといって後追いで行っても、真似と思われるだけなのです。
最初に目をつけて、巧みに売り出した方が得だと思いますよ!(笑)
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【この章の要約】
作家や物語は、やり方次第で観光資源化できる。
また作家や作品を有名にするのも、自分達でできる。インターネットを使えばコストも安い。
斎藤隆介も滝平次郎も、観光資源化するには十分なポテンシャルがある。
斎藤隆介は没後30年以上経っているので、そろそろ素晴らしい文学者として位置付けられてよいと思う。
そして、観光資源化するとしたら早い者勝ちだ。
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