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深読み 『ベロ出しチョンマ』!


★このページの初出 2020年2月22日
★このページの最終更新日 2020年3月30日

9.『ベロ出しチョンマ』の位置

3.『ベロ出しチョンマの位置』
<ポイント>
1.人間の本来性希求の作品
2.農村文化を継承する作品
3.創作民話の先駆者
4.『ベロ出しチョンマ』の位置
この章の要約


この章で説明させて頂いたことをまとめ、『ベロ出しチョンマ』の文学的な位置を、管理人なりに考えてみたいと思います。

ただ管理人は
文学研究家ではありませんので、現在日本文学史がどうなっているのかを把握している訳ではありません。

ですので、あくまで
個人的な位置づけに過ぎないということをお断りしておきます。



1.人の本来性希求の作品

『ベロ出しチョンマ』が書かれた時代、世界は第二次世界大戦を経験したにも関わらず、
核開発競争が続き、戦争や紛争などが続いていました。

また国内では学生運動が過熱し、若者達が「闘争」とするという国内外共に
争いの多い時代でした。

また東西冷戦で
核戦争のリアリティも高く、国内では公害も多発し、人間の存在自体が(おびや)かされる雰囲気だったと考えられます。

そんな争いが多く人の存在が危うい時代に、敢えて
人は素晴らしい存在だ
という主題を持って書かれた『ベロ出しチョンマ』は、
人本来の優しさを取り戻して欲しいという作者の願いのこもった、
人の本来性希求の作品
であると、管理人は考えています。

当時世界的にそういった
人間性回帰の文学潮流や芸術潮流があったどうかは分かりませんが、もしあったとしたら影響を受けていると思います。

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2.農村文化を継承する作品

また作品『ベロ出しチョンマ』を含む、作品集『ベロ出しチョンマ』は、当時崩壊が始まっていた日本の
農村文化を後世に伝えたいという意図も持った、
農村文化継承の作品
だったとも、管理人は考えています。

都市や労働現場系の作品群ではなく、農村を中心とした
田舎の文学ですね(笑)。

貴族的な雅さや、都会の憂鬱さや儚さ、華やかな恋愛などという、
スタイリッシュともいえる作品は作品集『ベロ出しチョンマ』にはありません。

大地の力、民の力、田舎に住む妖怪などという、
泥臭い大地に根ざした作品ばかりです。

そんな作品ばかりを作品集として集めたということが、農村文化を伝播させたいという
作者の意図だと管理人には思えるのです。

現在は農村文化や土着文化は
地域起こしや学校授業にも採用され、広く
「地域地域には素晴らしい文化がある」
ということが共有されていますが、今から半世紀前はそんなことはなく
「田舎には文化的価値はない。」
といった、
偏った認識があったのかもしれません。

作者斎藤隆介には、伝統の農村文化は
農民自身にも省みられることもなく、農民がどんどん都会に出て行くことで、語られることもなく死滅して行く運命にあると見えたのではないでしょうか?

そこで方言を取り入れ、妖怪や自然の力や農民の力を生かしながら物語を作り、農村には素晴らしい文化もあり、
人本来の生き方もあると農民自身や都会の人達にも伝えたかったのではないか。

そのために
『ベロ出しチョンマ』は作られたのではないかと、管理人は考えているのです。

『ベロ出しチョンマ』は主役は農民ですので、農民の生き様を描くことで、農村文化の
力強さを読者に伝える意図も持っていたと、管理人は考えています。

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3.創作民話の先駆者

そして当時まだ新しいジャンルだった「
創作民話」という分野を定着させたいという意図も持った、
創作民話を定着させるための作品
ともいえると、管理人は考えています。

日本文学の流れでいうと、
私小説やプロレタリアート文学とは違います。

純文学や幻想文学、時代小説や歴史小説、推理小説や大衆文学などのエンターテイメント作品群とも違います。

敢えていうなら、理想化をせず人間や自然をそのまま受け入れるという
自然主義文学に近いかもしれません。

ただ、
私小説のような自分のことを赤裸々に描くといった日本文学の自然主義ではなく、人間本来在り方や自然本来の在り方をそのまま描くという意味の自然主義です。

そして、子供向けの童話とも微妙に異なります。

作品集『ベロ出しチョンマ』にはオニやカッパや天狗などといった妖怪が出て来て、一見
子供向けの夢のある温かく優しい物語や、教訓物語のように思えますが、読むとそうではありません。

妖怪にも個性があり、物語の登場者が妙に
人くさいのです。

『ベロ出しチョンマ』もそうですが、ストーリーも
単純ではなく、ハッピーエンドばかりでもありません。

登場者もストーリーも、「花さかじいさん」などの伝承された一般的な昔話とくらべてずっと
リアルです。

このリアルさの裏には、作者が作品を作るにあたって
リアリズムの考えを取り入れ、個性や人間心理に基づく無理のないストーリーを作ったからだと、管理人は考えています。

児童向けの内容ではあるが、あくまで
大人をも対象とした新しい文学として創作民話を作者は作り、そのジャンルを定着させたかったのではないかと管理人は想像しているのです。

そのため『ベロ出しチョンマ』は、大人が読むのにも耐えられるように、敢えて分かりやすい作品にはせず、必要と思えることさえ書かない
奥深い作品にしたのだと管理人は考えています。

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4.『ベロ出しチョンマ』の位置

以上1〜3をまとめると『ベロ出しチョンマ』は、
農村文化を継承し、創作民話を根付かせる意図も持った、人の本来性希求の作品
といえると、管理人は考えています。

日本文学の系統でいうと、人や自然を理想化しないという自然主義の流れを汲んだリアリズムを根本に持つ、「創作民話」という当時としては
新しいジャンルに位置づけられる作品なのではないかと、管理人は勝手に考えているのです

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【この章の要約】
『ベロ出しチョンマ』は、人の本来性を追求し、廃れ行く農村文化を継承し、創作民話を定着させようとした作品。


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