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週刊少年ジャンプ作品衰退の法則

★このページの初出 2021年4月11日
★このページの最終更新日 2021年4月18日


4.バトルもので、何度も敵が味方になる


<このページの目次>
1.バトル作品では敵が味方になることがある
2.現在では敵が味方になって戦うことは無い
3.敵が味方になるストーリーが作られる理由
4.何度も敵が味方になると、読者が見切る
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1.バトル作品では敵が味方になることがある
週刊少年ジャンプの王道の1つであるバトルものでは、それまで生死をかけて戦っていた敵が味方になることがあります。

例えば、戦っている敵に魔法や呪いがかけられ操られており、主人公達に敗れ、魔法や呪いが解けて味方になる。

例えば、家族や大切な仲間などを拉致されて、敵は仕方なく敵対していたのだが、主人公達の活躍により家族などが解放されて味方になる。

例えば、権力者の命令で敵対していたが、戦ってみると主人公の方に正義があり、味方になる・・・

などのパターンで敵が味方になることが、時々起こります。

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現在では敵が味方になって戦うことは無い
「国家」や「人権」などが法律で確立された現在社会において、命をかけて戦闘していた敵が味方になって戦うということは、まずありえません

例えば国家同士の戦争で戦っていた敵が投降して来て、味方になって元の国と戦うということは、現実には無いのです。

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敵が味方になるストーリーが作られる理由
では、なぜ現実ではあり得ない敵が味方になるというストーリーが作られるのでしょうか? その理由を何点か上げてみたいと思います。

1.読者の隠れたニーズに応えるため
2.正義があれば、改心すると許されると伝えるため
3.人気上昇のため


1.読者の隠れたニーズに応えるため

現実には敵が味方になることはありえませんが、読者には現実にないからこそ、
フィクションでも見てみたいという隠れたニーズがあります。

この欲求は、人がフィクションを見たり読んだり体感したりする際の
根源的な欲求と言っても良いのです。

人は現実にはあり得ないことをフィクションで体験することで、心の奥底にある欲求を満たそうとするのです。

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2.正義があれば、改心すると許されると伝えるため

現実の戦争や紛争では、当事者の
どちらも自分に「正義」があると思っているので、互いに相手を非難し合い、最終的には武力で屈服させて支配するというのが、人類の歴史と言っていいと思います。

そして
「勝った者が、自分達が正義だと言う」
というのが現実世界の
実情です。

もしその現状をそのまま少年ジャンプの読者の少年達に伝えたとすると、例え納得できないような考えでも勝つと「正義」で、負けると正しくないと受け取られかねません。

力が強くて相手を屈服させれば、それが正義なんだと思われかねないのです。

しかし、これから未来を構築して行く少年達が
「力こそ全て」
と思ってしまうことは、
「相手の意見を聞き、仲よくしよう」
という学校や家庭の
教育を否定しかねません。

そこで、自分達に正義があれば
「例え敵対していたとしても、相手が自分達の否を認めれば仲間になれる」
という姿を描くことで、力による支配だけが敵が味方になる方法ではないと、少年達に
希望を持たせているのです。

そこで重要なのは、自分達の正義が真っ当で、敵の考えが
全く間違っていると読者に思わせることです。

敵の考えが賛同できるようなものだと、敵が味方になる際の根拠が曖昧になってしまうからです。

ですので、バトルものの敵の思想は
・怪物や妖怪などの、
人外が人を支配しようと考えている
・優れている者だけで、普通の人達を支配しようとしている
・悪辣な手段で世の中を支配しようとしている
・・・などの、現実にはありえないような、ハッキリと「
悪い思想」と分かるものが多いのです。

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3.人気上昇のため

強敵キャラクターでも、
容姿が良く、恐ろしく強い必殺技を持ち、読者が共感できやすい境遇や性格を持っていると、非常に人気が出ることがあります。

ただ、あくまで敵なのでいずれは主人公側によって倒されなければなりません。

倒されると原則
出番も減りますし、せっかくの人気も下がってしまいます。

キャラクターグッズを販売したり、ゲーム上のキャラクターとしても人気がある場合は、商売的にも痛手になります。

作者側としては人気のあるキャラクターは、なるべく作品上に生かしておいた方が得策なのです。

そこで人気強敵キャラクターを作品に残す
秘策として考えられたのが、味方に取り入れることです。

味方になると登場機会も増えて人気が上がりますし、元々実力者なので味方の戦力もアップするのでストーリー展開は楽になりますし、主人公側とのコンビネーション技などを考案してゲームなどに展開することもできるので、商売的にも良いのです。

まさに
いいことずくめなので、人気のある強敵が味方になることは意外と起こるのです。


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何度も敵が味方になると、読者が見切る
メリットのある「敵が味方になる」という物語展開ですが、何度も繰り返すとデメリットが多くなります。

まず、何度も繰り返すと読者は
「この敵はカッコいいから、いずれ
味方になるだろう
などと見切ってしまいます。

ひどい時は敵として
登場した瞬間から、
「これは最初から味方にするつもりで登場させたな」
と判断します。

僕も何度もそう感じたことがあります。

もう1つは、物語の
リアル感が損なわれることです。

現実では敵が味方になることはまずありえません。
それは読者もよく分かっているのです。

分かっていても、フィクションとしてそんなことがあって欲しいと思って読んでいるのです。

しかし物語上で敵が味方になることが繰り返されると、読者も
「いくらなんでも、そこまで敵が味方になることはないよ」
と、物語から
気持ちを離してしまうのです。

元々敵が味方になることにはリアル感は無いのですが、それを繰り返してしまうことで、
フィクション感がより強まってしまうのです。

読者に物語を見切られた上にフィクション感が強くなると、作品は衰退の度を高めて行くのです。

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このページの要約
少年ジャンプのバトルものでは、戦っていた敵が味方になることがある。

現実社会では、戦争などで戦っていた敵が味方になって戦うということは無い。

しかし、読者の隠れたニーズに対応するためや、味方に正義があれば改心すると敵は許されると伝えるためや、人気上昇のために敵が味方になる。

敵が味方になることを繰り返すと、敵が登場した瞬間にいずれ味方になるだろうと見切られたり、物語のフィクション感が強まったりして、作品は衰退して行く。

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