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作品名 失踪日記 作者名 吾妻ひでお
しっそうにっき あづまひでお


  ★このページの初出
  2020年2月22日

  ★このページの最終更新日
  2020年5月3日


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怖い状況が楽しい!

出版社 イースト・プレス
初出・連載時期 2005年3月単行本として初刷
管理番号 c-7

作品概要 作者紹介
ホームレスになったり、アルコール中毒になった作者の実話。悲惨な内容なのに、明るくのどかという稀有な作品。 1950年北海道生、2019年没。69年デビュー。作品に『ふたりと五人』『やけくそ天使』『パラレル狂室』『不条理日記』『陽射し』『ななこSOS』など。ギャグ、SF、美少女物など幅広い分野で活躍。

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この作品を殿堂に入れようと思った理由です。

興味をそそる体験
漫画家は結構いますが、本当にホームレス状態+アルコール中毒になった人は少ないのではないでしょうか。しかもそういう状態をマンガとして描いた作家はほとんど唯一といえます。
そんな実体験が描かれているのですが、新鮮で驚きの連続です。頭で考えたものとは違うリアルさが、非常に興味を引きます。

2 明るい作品世界
作者の体験は、暗く描こうと思えばかなり重苦しくなったと思うのですが、この作品は明るいです。
むしろ微笑ましいぐらいです。馬鹿笑いまでは行かないですが、吹き出しそうになる場面は結構あります。
作者は暗くなりがちな素材を、非常に按配よく明るく描き、読みやすい作品となっています。











3 超個性的な登場人物
配管工の上森兄弟、柳井さん…。
アル中の渡辺さん、ミニラN村さん、アル中自助グループAA(アルコホーリクス・アノニマス)の司会、A川…。
実話だけに、いかにも実際にいそうな一癖も二癖もある人達が登場します。こういう人達は実際に会うとうんざりですが、マンガになると個性的で面白いです。











4 見やすい独特の絵
暗い題材を明るしている大きな要因の1つが、大雑把のようでいて、必要な情報を的確に伝える絵です。
本人も話していますが、背景が不得意のようで、確かに雑把に見えます。しかし登場人物がどういう状況にあるのかは非常に分かりやすいです。また人物も全体に角が丸くて可愛くて、悲惨さをスポイルしています。
特に女の人は、作者の愛情を感じます。











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管理者に特にインパクトのあった話や描写や言葉をピックアップします。

腐ったリンゴ
『夜を歩く』夜の5 P40 
ゴミから拾ったリンゴは腐っていたが発酵していて、手を温めてくれたという場面。
凍えそうな時に、火や肌で温まるというのはよくある話ですが、腐ったリンゴで温まるという話はかなりレアです。
実体験でなければ味わえないリアル感です。

新聞勧誘を断る
『街を歩く』街の6 P98 
配管工として働いていた時に、部屋に来た新聞勧誘を断る場面。
「北海道から出稼ぎで給料全部仕送りしてるから金無いんです」
と言って断る(酒は呑んでますが)。
必死さが笑えます。












奥さんに差別を訴える
『アル中病棟』病棟2 P175
アル中で家族に入院させられ、同伴散歩に自分だけが行けなかったのを、電話で奥さんに訴える場面。
情けない姿が微笑ましいです。
奥さんも大変……(笑)

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管理人が好きなキャラクターの紹介です

不気味な兄ちゃん『街を歩く』街の2 P74
街を歩いている時に出会った、ホームレス風のオカマっぽい兄ちゃん。生態が不明で主人公が後をつけると忽然といなくなった。
こういう人は出会える時は会えるのですが、自分から探そうとすると探せなかったりします。しかも探し当てたとしても、生態は大して不気味ではなかったりします。
詳しく知らないほうが楽しめる人かもしれません。

社長(ケンちゃん)『街を歩く』街の3 P90
日本ガスの孫受け会社の社長。
現状や過去に関係なく社員を雇う大物。
すぐに部屋を用意してくれ、5万円と毛布などをくれます。
超個性的な社員達を雇い、日本を支えてくれています。
世間では無名でも、凄いなあと思います。

奥さん『街を歩く』街の13 P133
上記の社長さんより、本作ではある意味もっと大物。
2度も失踪し、アルコール中毒にまでなった作者を諦めずに再生(?)させた心の広い人(笑)
巻末の対談で作者は「家庭はぐちゃぐちゃ」になったと書いてありますが、この人がいなければ、この本は上梓されなかったかもしれません。

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管理人と作品との関わり、読む際に知っておくと一層楽しめる情報、管理人個人の期待や意見です。

確か新聞で知って読んでみた作品。

正直作者のことは名前ぐらいしか知りませんでした。
しかし読んでみると大変面白くて、関連本や続編まで買ってしまいました。

ホームレス状態とアルコール中毒が話の中心ですが、全体のトーンが明るく楽しく読むことができるのが、この作品が評価を受けて売れた最大の理由だと思います。

2度失踪した上に、後にアルコール中毒までになったとなると、普通の作品は
「どうしてそうなったか? そうならないようにどうすればよいか? どう立ち直れば良いのか?」
教条的になってしまいがちです。

確かにそういう内容は非常に大切なのですが、どうしても作品内容は硬く、重くなってしまい、当事者でないと読む気が起きない内容になりがちです。

しかしこの作品はクールな視点で失踪生活やアルコール中毒生活を描くことにより、教条的ではない作品世界を描くことに成功しています。読んで暗くなるようなことはないので、気軽に手に取ることができます。

作中『街を歩く』の12〜14は、吾妻ひでおの漫画家生活の振り返りになっており、作者のバックボーンも知ることができます。

また巻末にはとり・みき氏との対談、表紙裏には裏失踪日記が掲載されており、この作品を一層楽しめるように工夫されています。

この作品には、この作品の10年後に発刊された『アル中病棟』という続編もあります。こちらも面白いので、興味のある方は是非読んでみてください。

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作品を今読むにあたっての注意点、版元の変遷、作家のその後など作品・作者について管理人が
必要だと思った情報を掲載しておきます。

作者が最初に失踪したのは1989年、2度目は92年。
作者が39歳頃と42歳頃になります。
またアル中で入院したのが1998年になりますので、作者が48歳頃となります。

最初の失踪からはもう30年になり、アル中で入院してからも20年になります。

この『失踪日記』の初版が2005年ですので、発刊されてからも10年以上経っています。

しかしこの作品の不思議なところは、全く古びた感がないことです。

恐らく今失踪しても同じような状況だろうし、アル中になっても、入院中の生活などの細かい差異はあるでしょうが、基本的に同じような状況になると思われます。

そういう意味では、失踪(ホームレス)状態もアルコール中毒も、人間にとって普遍的な所業だといえるのではないでしょうか。

従って、この作品及び続編の『アル中病棟』に書かれていることは、今後も古びることはなく、長く楽しめるだろうと思います。

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このページを作成する時に使用した作品の詳細を底本として記載しておきます。
また参考にした書籍・サイト・ブログなども掲載させて頂きます。
さらに関連して読んで頂きたい書籍・サイト・ブログなども掲載させて頂きます。

底   本 2005年6月6日第7刷を元にこのサイトを作成
参   考 特に無し
関   連 版元オフィシャルサイト

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失踪日記』を購入されたい方のための情報
※必ずこの表中段の「購入にあたっての注意点」をお読みください
『失踪日記』の現在の販売状況
2020年1月現在、販売中です。電子書籍版もあります。電子版には特典があるようです。
人気作なので、当分絶版にはならないのではないでしょうか。
購入にあたっての注意点
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