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週刊少年ジャンプ作品衰退の法則

★このページの初出 2021年4月11日
★このページの最終更新日 2021年4月18日

1.物語や登場人物の目標が変わる

2.登場人物に新たな目標が盛られ、読むのがしんどくなる


<このページの目次>
1.主要な登場人物は最初から詳細に人物造形してある
2.連載長期化で登場人物に新たな目標が設定される
3.新たな目標の具体例
4.目標が盛られると読者の共感が深くなる
5.目標を盛られると作品が重くなる
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1.主要な登場人物は最初から詳細に人物造形してある
商業出版では、通常物語を始めるに当たって、主人公・仲間・恋愛対象・ライバル・強敵などの主要な登場人物については、生まれや家族構成、外見、性格、生育環境などの人物造形は、かなり丁寧に構築されています。

人物造形がしっかりできていないと、連載を続けて行くうちに、途中で性格が変わってしまったり、行き当たりばったりの設定を追加されて、それまでのストーリーと
矛盾が生じたりしてしまう可能性があるからです。

特に少年ジャンプの場合は、編集者が強力な
コーチとしてついているので、連載開始時には、ストーリー展開と共に人物造形も長期連載にも耐えられるように、相当深くまで設定されているはずなのです。

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連載長期化で登場人物に新たな目標が設定される
作品に人気が出て、連載が長期化すると、それに伴って当初予定していないストーリーが展開されたり、当初は全く設定していなかった登場人物が登場したりします。

また連載開始時の目標を達成してしまった場合は、物語全体に新たな目標が設定され、それに伴ってそれまでの登場人物の立場が変わったり、作品の舞台自体が変わってしまい、全く
異質な設定が盛り込まれたりします。

例えばスポーツもので、主人公達は強豪を倒すチャレンジャー的な位置づけだったのが、強敵を倒して自分達が強者の立場に変わり、より上の強豪と戦いつつ、新興勢力のチャレンジも受けないといけなくなる。

例えばバトルもので、主人公側がそれまでの強敵を倒したら、その強敵を操っていた異次元の存在と、それまでとは遥かにレベルの高い異界でのバトルが始まる。

などのように、それまでの登場人物達の立場が大きく変わってしまうことが起こるのです。

そういった登場人物達の立場が変わる時に、登場人物達に新たな目標が設定されます。


また、物語が最終目標に近づき、その目標を達成すると次の目標設定が難しそうな場合も、登場人物達に新たな目標が設定されたりします。

例えばスポーツもので、ある登場人物がこの試合で負けると、家業のためにそのスポーツを辞めて留学させられるのだ。だから勝たなければならない。

例えばバトルもので、ある登場人物の覚えていない過去に実は敵が関わっていて、その敵を倒すことは実は自分の家族の仇をうつことなのだ。なので絶対に勝たなければならない。

などにように、その試合の意味を深めたり、物語の
進行を遅らせたりするために、新たな目標が設定されるのです。

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新たな目標の具体例
登場人物達に、新たにどんな目標が設定されるかというのを具体的に見てみます。

1.スポーツもの
2.バトルもの


1.スポーツもの

●実は試合に勝たないとその競技から引退させられる
●実は自分や家族の命運がかかっている
●実はその競技ができなくなった仲間のために戦っている
●実はその試合で誰かの引退が決まっている
●実は恋愛対象の希望がかかっている
●実は相手に勝つことで自分自身の
葛藤が解決される
●実は先輩や同僚や家族の長年の希望が託されている
●実はその部や流派の存亡がかかっている
●実は試合に勝った賞金で誰かの命を救える
etc・・・・・

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2.バトルもの

●実はその戦いに宇宙や地球の命運がかかっている
●実はその戦いに人類の命運がかかっている
●実はその戦いに大切な人や家族・仲間の命がかかっている
●実は敵は自分の出生・人生に大きく関わる
だった
●実は敵も操られていて助けないといけない存在だった
●実はその戦い自体が罠で敵も本当は仲間だった
●実は自分は
王的な存在で地域を平和にする宿命があった
●実は相棒はこの戦いを最後に消えてしまうのだった
etc・・・・・

このような新たな目標が設定され、登場人物達造形が
盛られるのです。

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目標が盛られると、読者の共感が深くなる
登場人物達に新たな目標が盛られると、その人物の印象は深くなります。

例えばスポーツもので、主人公に
「実は今戦っている相手とは、先祖代々からのライバル関係で、相手の卑怯な方法で父が負けて道場に生徒が集まらなくなり、貧乏になり母は失意のうちに亡くなった。この試合で勝つことで、道場の評価を盛り返し父親の無念を晴らしたい」
という目標が盛られると、読者の主人公への
共感は一層深くなります。

例えばバトルもので、敵の一人に
「実は元々は信頼できる強い味方だったのだが、家族を人質に取られた上にマインドコントロールの魔法をかけられ、今は強敵になってしまっている。この戦いで勝って元に戻したい」
という目標が盛られると、
敵に対する共感が深まります。

登場人物への読者の共感が高まると、作品の読者への
親和感がより深くなるので、作品にとっては大きな利益になります。

主な登場人物にどんどん新たな目標を盛って行くと、それぞれに共感するファンも増え、
キャラクター人気投票やグッズ展開にも有利になります。

また物語に新たなエピソードを入れられるので、
連載の長期化にも役立ちます。

つまり登場人物達に新たな目標を盛ることは、作品の人気向上や連載の長期化に大きな
メリットがあるのです。

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目標を盛られると作品が重くなる
登場人物達に次々と新たな目標が盛られると、確かに作品への親和感が高まりますが、デメリットもあります。以下で解説させて頂きます。


デメリット1:作品の進行が遅くなる
デメリット2:作品の印象が散漫になる
デメリット3:作品が重くなる


デメリット1:作品の進行が遅くなる

登場人物達に新たな目標を盛ると、盛られる人物が多い程、物語の進行が
遅くなって行きます

新たな目標の説明のために、過去のエピソードなどを描いていると、どんどんと物語のストーリーが遅延して行きます。

例えばスポーツもので、試合中に登場人物の新たな目標のエピソードを入れたりすると、試合が全く動かなくなってしまいます。

例えばバトルもので、バトル中に登場人物の新たな目標のエピソードを入れたりすると、命をかけた戦いの最中に全く別の話が展開されたりします。

このような作品の進行の遅れは、作品のストーリー自体を楽しんでいる読者にとって、
うんざりしてしまうことにつながります。

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デメリット2:作品の印象が散漫になる

登場人物に新たな目標を盛って行くと、その数が多ければ多い程、作品の
全体の印象が散漫になって行くことがあります。

読者にとっては、登場人物それぞれ何かしらの事情を持っていることを次々に伝えられるので、よく分からなくなって来るのです。

連載だけで作品を読んでいる読者などは、特に理解が難しくなります。

また自分の好きな登場人物に新たな目標が盛られるならまだ理解できますが、好きでもない登場人物やライバルなどにも盛られると、どうでも良くなって来ます。

作品に様々な登場人物が登場し、それぞれ目標を持って試合や戦いに臨んでいるというのは読者には伝わります。

しかし、目標の数が多ければ多い程読者は
全ては理解できず、作品全体の印象は散漫になって行くのです。

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デメリット3:作品が重くなり、読むのがしんどくなる


登場人物それぞれに新たな目標が盛られると、人物の造形は深くなりますが、一人一人の背景を読者が把握しないといけなくなるので、作品全体が非常に重く感じられるようになってしまいます。

例えば、バトルもので主人公は敵に親を殺された復讐のために戦い、ヒロインは洗脳されて裏切った姉を救出するために戦う。

仲間の一人は敵にさらわれた弟を探すために戦い、他の一人は元恋人の復讐のために戦う・・・などと、それぞれに目標が盛られ、それを読者は全て受け止めないといけないので、読むのに相当なエネルギーが必要になって来るのです。

またスポーツもので設定を盛ると、最初は純粋に自分を鍛えて高みを目指していた主人公が、実は様々な重荷を背負っていたとか、ライバルにも勝たないといけない重い事情があったなどとなり、スポーツの爽やかさがスポイルされたりします。

その結果、次第に読むのがしんどくなって行き、作品は衰退して行くことになるのです。

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このページの要約
週刊少年ジャンプの作品は、連載開始時に念入りな人物造形をしてある。

しかし人気が出て連載が長期化したり、連載当初の目標を達成してしまった場合などには、登場人物達に新たな目標が盛られることがある。

登場人物に新たな目標を盛られると、それぞれの背景が深まるので、読者の作品への共感が高まるという大きなメリットがある。

しかし、作品の進行が遅くなり、印象も散漫になり、作品全体が重くなって読むのがしんどくなり、作品は衰退して行く。

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