本文へジャンプ


週刊少年ジャンプ作品衰退の法則

★このページの初出 2021年4月11日
★このページの最終更新日 2021年4月18日

9.ストーリーが迷走する



1.ジャンプ作品は、連載開始時には完成していない
2.マンネリ化すると、作品は衰退の一途をたどる
3.予定調和・ご都合主義は、一部ファンしか残らなくなる
4.壮大になり過ぎると、ついて行けなくなる
5.読者の望むとおりにすると、コアなファンだけしか残らない
このページの要約へ


1.ジャンプ作品は、連載開始時には完成していない
週刊少年ジャンプの作品で特徴的なのは、連載開始時においては、まだ作品が完成していないということです。

例えば、単行本20冊分程度の話が完結まで出来上がっており、後はそれを分割して雑誌に発表して行くだけ、という掲載方法ではありません。

まずは連載にこぎつけないといけないので、長期連載に耐えられるような
綿密な物語設定やキャラクター設計をした上で、連載決定用の作品を提出し、OKが出たら連載開始です。

連載が開始されても人気が出なければ
打ち切りなので、人気が出るように物語展開やキャラクター造形にも変化をつけて行かなくてはなりません。

つまりストーリーは
変化して行くのです。

このストーリーの変化が読者にマッチし続ければ、ヒット作としてずっと支持を得るのですが、現実にはストーリーが
迷走し、作品が衰退して行ってしまうということが起こります。

このストーリーの迷走は結構起こり、大ヒット作品なのに、人気が低迷して行く
大きな要因となっています。

ここではどんなストーリーの迷走があり、どう作品の魅力が落ちて行くかをご説明させて頂きたいと思います。

このページのトップへ


マンネリ化すると、作品は衰退の一途をたどると
1話や数話で完結して行く物語では、マンネリ化が支持を受ける場合もあるのですが、一貫した物語で一番怖いのが、マンネリ化です。

少年ジャンプの読者である
少年は、新しいものや変化が大好きです。

逆に、パターン化した単調な物語展開は好きではありません。

例えば、バトル作品で強敵を倒したら、新たな特技と仲間が加わったとします。

例えば、スポーツ作品で強いライバルを倒したら、今までいがみ合っていたのが、試合終了と共にお互いを称えあったとします。

一度だけなら良いのですが、次の強敵やライバルを倒した時も同じようなことが起こると、もう読者は
見切り始めます。

3度目になると
「前とおんなじじゃん。これなら
ボクでもストーリーを考えられる」
などと思ってしまい、完全に
飽きて来ます。

これがマンネリになった状態です。

一度マンネリ感を読者に与えてしまうと、作品は
急速に人気を失って行きます。

そしてマンネリ化と判断された作品は、もうどんな強力なカンフル剤を打っても効き目が薄くなります。

せいぜい寿命を若干延長するぐらいの効果しか無く、作品は衰退の
一途をたどって行くのです。

マンネリ化を感じる作品は、作者側の
「新しい展開を生み出す
能力や努力が足りない
という印象を読者に与えてしまい、少年達はもう読むことさえやめてしまうのです。

このページのトップへ


予定調和・ご都合主義は一部のファンしか残らなくなる
ここで言う「予定調和」とは、
「予め丸く収まるように定められていること」
と思って頂ければ幸いです。

例えば、連続のテレビドラマなどでよくある
「何かトラブルが起こるが、結局は
良い解決に落ち着く」
といった状態だと思ってください。

ここで言う「
ご都合主義」とは、
「ある結果を起こすために、読者も違和感を感じる事象を起こすこと」
と思って頂ければ幸いです。

例えば、バトルものの作品で
「生死をかけた激烈な戦いをしているにも関わらず、人気のある女性キャラクターには
なぜか全く攻撃が当たらず、戦闘終了後も無傷で生き残る」
といった状態だと思ってください。

予定調和とご都合主義は組み合わされて使われることも多いです。

例えば
「味方の強い重要人物が、敵の激烈な攻撃により
瀕死の重傷を負うが、予め味方が密かにかけていた特技により、奇跡的によみがえって敵を倒し、主要な味方は一人も欠けなかった。」
といった状態です。

これは、味方は全員生き残るという予定調和があり、ただそれだけだとストーリー的に面白くないので、主要人物が死にそうだと
読者をハラハラさせた上で、生き返させるというご都合主義を発揮したものです。

他の章で解説させて頂いた
生死をかけた戦いで、敵も味方も死ななくなる
とか
バトルもので、何度も敵が味方になる
というのも、予定調和+ご都合主義といえます。

この予定調和やご都合主義を繰り返すと、読者は
「致命的な傷を負ったけど、
どうせこの登場人物は死なないだろう」
「強いと見せかけているけど、
どうせこの敵やライバルは負けるだろう」
などとストーリーを見切ってしまい、作品は衰退して行きます。

ただ予定調和やご都合主義が好きな読者や、ストーリー的に無理があっても、それを含めての作品のファンである読者は
一定数いますので、作品はそういった一部のファンだけのものになって行ってしまうのです。

このページのトップへ


壮大になり過ぎるとついて行けなくなる
バトル作品で大きな目標を達成した後に、その世界の成り立ちに関わる話が説明され、その世界を創出した「創造主」や「神」的な存在との戦いになることがあります。

またスポーツ作品でも、国内で最強になった後に、今度は世界の猛者的なライバルが紹介され、
世界規模の戦いになって行く場合があります。

バトル作品で、新たな世界観や創造主的な登場人物が出て来ると、読者は大抵理解できず
大混乱してしまいます。

またスポーツ作品でも、世界のいろいろな国から強敵がどんどん出て来ると、その人物達の
一人ひとりまでは理解できず、混乱してしまいます。

つまり、作品が壮大になると、読者はついて行けなくなってしまうのです。

特に
連載だけで読んでいる読者にとっては、難易度が高くなります。コミックスを読んでいても理解が難しいこともあります。

話を壮大にするのは、
作者側にとっては作品世界を深めた上で連載を続けられる優れた手段です、

しかし、ついて行ける読者が減ってしまい、作品の衰退につながることの方が多い、
リスクの高い手法なのです。

このページのトップへ


読者の望み通りにすると、コアなファンしか残らない
1.ライバルや敵が味方になったドリームチームは人気が出ない
2.読者の予想を超え続けないと作品は衰退する
3.ヒット規模が大きいと、コアなファンだけで連載は続けられる


1.ライバルや敵が味方になったドリームチームは人気が出ない

まずは読者の望み通りというのはどういうことかを、
「競ったり争っていたライバルや敵が味方になる
という例でご説明させて頂きたいと思います。

ジャンプ作品がヒットすると、味方だけではなく
ライバルや敵にも人気が出て来ます。

それぞれのキャラクターに人気が出て来ると、読者の中には
「ライバルや敵も
一緒になったチームや部隊の活躍を見てみたい」
という欲求を持つ人も出て来ます。

例えばスポーツ作品で、地方大会で超強力なライバル達を倒して優勝したとします。

そこで本来は物語は終わっても良いはずですが、人気があるので
連載を延長したいとします。

その場合に、ファンの欲求に応えて使われる手法が、
「ライバル達を同じチームに入れた
ドリームチーム
の結成です。

天才的な技能を持つライバルや、事情を抱えながら努力で一流になったライバルと、その人達に勝った主人公達が1つのチームになるのです。

人気が出ないはずは無いと思えます。

しかし、現実は「ドリームチーム」は思ったほど
人気が出ません

その大きな理由は3つです。


a.強くて当たり前だから

強者だけが集まるのですから、強くて当たり前です。
読者は
「弱い者が努力して強い者になって行く」
という話は好きですが、
「強者が弱者を
蹂躙する」
という話は好きではありません。

勝って当然の者が勝つのは、面白くないのです。


b.より強力なライバルや敵を造形出来ていないから

作品に人気が出るには味方だけではなく、
ライバルや敵の造形も非常に重要です。

そのため、作者側は連載開始当初から周到にライバルや敵を深く造りこみ、主人公側と
同じぐらいの存在感を持たせます。

主人公側と同じかそれ以上の実力があるライバルや敵でないと、主人公側が成長できないし、その者達に「勝つ」という
価値も上げることができないからです。

ところがその深く造形したライバルや敵に勝ってしまうと、それ
以上の存在を造りこむのが難しいのです。

なぜなら、それまで時間をかけて造りこんだライバルや敵と違って、いきなり読者に
「より強い存在」
ということを印象づけないといけないからです。

例えばスポーツものでしたら、いきなりライバルとして今まで出て来ていないキャラクターが出て来ても、読者はその強さも人となりも時間をかけて説明されていないので、共感できないのです。

例えばバトルものでしたら、それまでの敵より比較にならない程の高次な存在が登場して来て、それまでの敵と同じ部隊でその新たな敵と戦うとしても、読者は
「じゃあ低次な存在同士で争ってないで、最初からその敵と戦っておけば良かったじゃん」
などと思って、共感できないのです。


c.作者が物語構築の力を抜いているから

読者が
「ドリームチームを造って欲しい」
と思い、それをそのまま作者がストーリーにしてしまうのは、作者にとっては
です。

なぜなら、それまでのキャラクターが活かせますし、ストーリー展開も、ドリームチームが勝つように構築して行けば良いからです。

読者が「ドリームチーム」を望むということは、今までのキャラクターが
一緒に活躍する姿が見たいからです。

従って、ドリームチームは負けるわけには行かないのです。
それまで散々時間をかけて、味方とライバルや敵の強さを構築して来たのですから、負けるとそれまでのストーリーの
否定にさえなってしまうのです。

作者は新たな強敵は用意しますが、結局はドリームチームに倒されるというストーリーになってしまうのです。

作者のストーリーに対する考案力は、いかにドリームチームを勝たせるかだけに使われることになり、
物語構築に使われなくなってしまうのです。

作者が物語構築に真剣でなくなると、物語は
平板になり同じような展開が繰り返されるようになって行きます。

作品がマンネリ化して行ってしまうのです。

この項目のトップへ


2.読者の予想を超え続けないと作品は衰退する

少年ジャンプの作品は、
「最終的には主人公達が成長し、
勝利する
というパターンであることは、読者は読む前から知っています。

では、主人公が勝つと分かっていてなぜ読むのでしょうか?

それは
「読者が予想もできない登場人物達が、予想できないライバルや敵に、予想できない方法で勝って行く」
という
新たな物語
を愉しむからです。

主な読者である少年達は、主人公が勝つのは分かっていても、その主人公が今まで
見たこともない魅力的な特長があり、ライバルや敵も全く新しく、勝利方法が新しかったりするのを、ワクワクしながら愉しむのです。

ところが、作者が読者の望みどおりに作品を作ってしまうと、
「今までのキャラクターが、新たなライバルや敵にも
予想通りの方法で勝って行く」
ということになりがちです。

読者に人気のあるキャラクターや技などは、もう作品から消せなくなってしまい、新たなライバルや敵を登場させても
新鮮味が無くなってしまうのです。

読者の望みに作者が
迎合した結果、物語は読者の予想通りになってしまい、ワクワク感が大幅に削がれてしまうのです。

飽きやすい少年達は、ワクワクしない物語は好きではありません。ワクワクしないと、すぐに作品から離れて行ってしまうのです。

この項目のトップへ


3.ヒット規模が大きいと、コアなファンだけで連載は続けられる

作品がメガヒットして、コミックスを出せば
100万部売れる作品があったとします。

ストーリーの大きなヤマは超えたのですが、次にそれだけのヒット作を出すのは大変なので、
連載を続けるために敵味方の人気キャラクターを集めたドリームチームを作り、新しい強敵達と競わせることにしました。

その結果、ストーリーはドリームチームが勝って行くだけになってしまい、人気は衰退して行きました。

ピーク時は新刊が出れば100万部売れましたが、次第に部数が落ちて行き、今では10万部になってしまいました。

ピーク時の
10分の1ですが、その後はその程度の部数で安定するようになりました。

ヒット作には、
「どんなにつまらなくなっても、その
作品全てを受け入れる
というコアなファンがいます。そのファン達が10万人も購入し続けてくれているのです。

毎回10万部売れる作品は
かなり貴重なので、そのヒット作はその後も連載が続けられました。

コアなファン以外は
「全然面白くなくなっているのに、何故か連載が続いている」
という不思議に思える状態ですが、作者側は十分に
利益を出すことができるので連載を終わらせる必要はないのです。


読者の望み通りにするとストーリーの魅力が落ち、作品はどんどん衰退して行きます。

しかしコアなファンは最後まで作品を支え続け、コアなファンの数が多ければ連載は続いて行くのです。

この項目のトップへ

このページのトップへ


このページの要約
少年ジャンプの作品は、連載開始には完成していない。連載を続けながら、人気が出るようにストーリーを工夫して行く。

そのため、ストーリーが迷走してしまい、作品が衰退して行ってしまうこともある。

作品がマンネリ化していると感じられてしまうと、飽きっぽい少年達はどんどん作品から離れて行ってしまう。

予定調和やご都合主義と思われてしまうと、コアなファンしか残らなくなる。

作品が壮大になり過ぎると、読者がついて行けなくなる。

主人公達とライバルを一緒にしたドリームチームを結成するなど、読者の望みどおりにすると、コアなファンしか残らなくなって行く。

このページのトップへ
週刊少年ジャンプ作品衰退の法則トップへ


<広告>
※クリックすると他サイトに移動します。そのサイトで購入・有料契約される場合は、自己責任でお取引ください。