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週刊少年ジャンプ作品衰退の法則

★このページの初出 2021年4月11日
★このページの最終更新日 2021年4月11日

10.その他の衰退要因


<このページの目次>
1.衰退の原因は多様化している
2.セクシーシーン
3.作風を変える
4.現実と合わなくなる
5.アンコンシャス・バイアスに配慮する
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この章を書くにあたり最初に断っておきたいことがあります。
それは、僕は
「マンガも、できるだけ
自由な表現をしてほしい
と思っているということです。

違法表現以外では、作者の表現力を
最大限に発揮してほしいと思っています。

以下で、何個かの表現に疑問を呈しますが、それはあくまで作品が衰退してしまうのではないかという観点からです。

「表現をしてはならない」
と言うのではなく、
「表現がむしろ作品を衰退させるかもしれない可能性がある」
ことをお伝えしたいだけなのです。

「表現の自由」
侵害するつもりは毛頭ありませんので、その点だけ最初にお断りさせて頂きます。



1.衰退の原因は多様化している
週刊少年ジャンプの主要読者である現在の少年達には、テレビゲーム、インターネット、テレビなど様々な娯楽が沢山あります。
その分、少年ジャンプが最大部数を記録した1994年頃に比べて、少年達のマンガに対する
期待値は低くなっています。

マンガを読まなくても他に沢山の娯楽があるのですから、少年ジャンプ作品が面白くなければ、すぐに離れて行けば良いのです。

少年マンガ雑誌だけではなく、紙媒体の雑誌をお金を出して購読すること自体、
長期低迷傾向にあります。

つまり、他の少年マンガ誌を含め
マンガ雑誌全体の人気も落ちているため、少年ジャンプ作品は以前に比べて衰退しやすくなっているのです。

しかも、現実はどんどん移り変わり、以前の少年達が持っていた夢や希望や
規範なども大きく変わっています。

さらにインターネットの普及により、作品に対する批判なども非常にしやすくなりました。

匿名者のインターネットの批判により、作品が衰退してしまうこともあるのです。

ジャンプ作品の衰退要因は、
多様化しているのです。

「週刊ジャンプ作品衰退の法則」の最後として、ここでは作品そのものよりも、作品を取り巻く
状況などからも、作品が衰退して行く要因を考えてみたいと思います。

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セクシーシーン
少年ジャンプ作品では、時折女性のセクシーシーンが描かれることがあります。

よくあるのは、女性登場人物達の入浴シーンや着替えシーンです。

それを
偶然見た男の主人公が鼻血を出したりするのですが、お約束といえばお約束のシーンです。

そういったシーンを入れれば読者アンケートに反映され、順位が上がるのかもしれませんが、作品トータルで考えると、あまり
得策ではないのではないかと僕は考えています。


その理由の1つは、
女性読者の存在です。

女性読者にとって、女性登場人物のセクシーシーンというのは、どういう印象なのでしょうか?

そういうシーンを見たいという女性読者もいるでしょうが、多くは
フーン
といった、肯定でも否定でもない、何とも言い難い感情なのではないでしょうか。

不快と思う女性読者もいると思います。

そういった何とも言い難い感情や不快な感情を持たすようなシーンは、ストーリーにとっては
邪魔です。

そんな無駄な感情を持たすより、ストーリー自体を工夫して読者を惹きつけた方が効果的なのです。


もう1つは、セクシーシーンを見せるという手法自体が
古いということです。

僕は2時間サスペンスが好きなのですが、
大昔の2時間サスペンスには、必ず女性のセクシーシーンがありました。

ところが現在ではまずありません。

様々な理由で、もう
ニーズが無くなったのです。
僕もセクシーシーンが無い方がいいと思っています。

昔はテレビ番組全体でもセクシーシーンが結構あったような気がしますが、今は深夜でもないとまず見ることはありません。

子供も見れるテレビでセクシーシーンを流すということが、社会的にも許されなくなって来たのです。

セクシーシーンがある場合は
「刺激的なシーンがあります」
と予め
告知されたりします。

また映画などでは、
成人指定
などのように子供が見られないようにする場合もあります。

テレビ番組で温泉の紹介などで女性の入浴シーンはありますが、湯の中に入っていて体の線も見えず、セクシーさを感じさせなくしている場合がほとんどです。

このように、子供が見れる時間のテレビでは、セクシーシーンはまず無いといっても過言ではありません。

ところが、ジャンプ作品ではセクシーシーンが使われます。

確かに読者である少年達には、セクシーシーンが好きな子は一定数いると思います。

しかし、だからと言って敢えてセクシーシーンを入れる必要があるのかは疑問に思えます。

ジャンプ作品は高校生ぐらいが主人公のことが多く、当然女性の入浴シーンは、
高生位の女子の入浴ということになります。

もしテレビ番組で未成年である女子高生のセクシーに見える入浴シーンを流したとしたら、
深刻な問題になります。

番組打ち切りはもちろん、テレビ局に苦情が殺到して企業イメージが下がる可能性も高くなります。

女子高生などの未成年者のセクシーシーンを流すという行為は、結構
リスクが高いのです。

ストーリーの必然があればセクシーシーンも必要だと思います。

しかし、読者アンケートのためにセクシーシーンを無理やり入れるのは、逆に
作品の衰退を早めるのではないかと僕は思っています。

それぐらい、セクシーシーンに対する社会の目は厳しいのです。

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作風が変わる
滅多にありませんが、ギャグマンガだと思っていた作品が、人気が出るにつれてバトル物などのストーリー重視の作品に変わることがあります。

しかもギャグマンガ向けの絵柄のまま変わって行ったりしますので、読者は相当
面くらいます

それまでおとぼけだった登場人物がなんだか真面目でシリアスなことを言い始めたりするので、違う人物に思えたりします。

なぜそういうことが起こるかを
想像すると、
・シリアスな話の方が読者アンケートが良かった
・作者が元々シリアスな話が書きたかった
・ギャグのネタが尽きた
・作家の売り出し方法が変わった・・・
などの理由が考えられます。

読者にとっては、それまで笑おうと思っていた作品で、真剣な戦いが繰り広げられたりするので、
期待を裏切られてしまいます。

その結果、作風を変えた作品は衰退して行くことが多くなります。

芸能界でも、お笑い芸人がシリアスな役者に転身するのは、難易度が高いです。

少年ジャンプ作品も、作風を変えるのは難しいのです。

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現実と合わなくなる
1.少年ジャンプ作品登場人物にはパターンがある
2.現実と登場人物のパターンが離れている場合がある
3.現実との乖離が大きすぎると作品は衰退する


1.少年ジャンプ作品登場人物にはパターンがある。

長年少年ジャンプを購読した結果、登場人物達の設定や嗜好・行動などには
パターンがあることが分かって来ました。

恐らく読者アンケートの結果から、人気が出るパターンが分かり、その結果を反映させているのだと思います。

分かりやすいように、
を挙げてみます。
・主人公はほぼ男性。五体健康で、正義心を持っている
・ヒロインは美しく、大抵主人公と良い仲になる
・男性は女性が好き。女性は男性が好き。
・女性の胸の大きい方が男性は喜ぶ
・異性にモテるのは素晴らしい
・母親は若くて家事がうまく子供に優しい
・幸せそうな登場人物には理解のある両親がいる
・一芸に秀でた女性は料理が下手
・女性は機械オンチ
・勝利すると喝采を受け、ステージが上がる
・裏方の人が主人公になることはほぼ無い
・男は外で戦ったり働く
・修学旅行は皆楽しみにしている
・容姿が良い登場人物はモテる
・バトルで女性の顔に傷をつけるのはダメ
・チャイナドレスを着た女性が「〜アルよ」などと喋る
・バレンタインデーは女性が好きな男性にプレゼントする
・クラス委員は優秀
・・・

これらのパターンは作品によって形を変えながら、ずっと
繰り返し表現されています。

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2.現実と登場人物のパターンが離れている場合がある

上記のような登場人物のパターンは繰り返し表現されていますが、実は現実と乖離しつつある状態も結構あります。

分かりやすいように
を挙げてみます。


・男性は女性が好き。女性は男性が好き。

これに関しては、敢えてここで言わなくても良いぐらい、現実は変わっています。

同性同士好きな場合もありますし、そもそも
性認識自体が、「男・女」と単純に分けられるものでもありません。


・女性の胸は大きい方が男性は喜ぶ

そういう男性もいるでしょうが、胸の大きさに無関心な男性もいます。そもそも胸の大きさを話題にすること自体
セクハラです。


・母親は若くて家事がうまく子供に優しい

現在日本では
晩婚化が進み、昔でいう高齢出産が当たり前になっています。20代の「若い」母親ばかりではないのです。

また働く母親も多く、
家事は男女共同という家族も多くなっています。朝ご飯を作って子供を起こして洗濯するのも女性に限ったことではありません。


・一芸に秀でた女性は料理が下手

よく描かれるパターンですが、女性は料理をするという前提が背景にある描写で、
ジェンダー的にどうなのかと思われます。


・修学旅行は皆楽しみにしている

修学旅行を楽しみにしている子は多いと思いますが、全員がそうでは無いと思います。団体行動は嫌な子だっているはずです。

また最近は
宗教上の理由から、特定の寺院等には行かないという子もいて、旅行場所も以前ほどパターン化していません。


・チャイナドレスを着た女性が「〜アルよ」などと喋る

チャイナドレス自体、特定のお店や
イベント以外で見ることはまずありません。

また現実には中国系の方が「〜アル」などと喋ることもありません。
差別的表現と取られかねません。

このように少年ジャンプ作品が描いているパターンは、
現実が変化していて、もう現実とずれてることがあるのです。

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3.現実との乖離が大きすぎると作品は衰退する

ジャンプ作品は
フィクションなので、現実とずれていても大きな問題になることは少ないです。

しかし少年達のおかれている現実と作品世界で描かれていることが、余りにかけ離れていると、作品は衰退して行く可能性が高くなります。

例えば・・・

・部活動で顧問が部員を激しく威嚇する

スポーツ物のマンガで
勝つことだけが全て
といった指導者が脅迫的な指導をする姿が描かれたりしましたが、今現実に行うとパワハラなどの大問題。


・男子生徒が女子生徒の着替えや入浴をのぞきに行く

いまだにマンガでは描かれることがありますが、現実のそんなことを行ったら、
犯罪


・生徒会や風紀委員が学生を取り締まる

生徒会に昔の
憲兵みたいな学生がいて、仲間である学生を激しく吊るし上げたり、風紀委員がクラスメイトを先生に密告したりする場面が描かれることがあります。

しかし、現実には生徒会や風紀委員にはそんなことをするために存在していませんし、実際に行うと「
いじめ」ととられかねません。


・クラス全員が日本人

日本も人種の多様化が進みつつあり、
都会の学校ではオール日本人というのは、減りつつあります。

公立学校はもちろん、少子化にさらされている私立学校も、
多様な人種を受け入れているのです。


繰り返しになりますが、マンガ作品はフィクションなので、ある程度現実と違うのは許容されます。

むしろ
現実と違う方が人気を博したりします。

しかし、現実と余りに乖離しすぎると、飽きやすく他の娯楽も沢山ある少年達は、
夢物語過ぎる」
と感じてしまい、作品は衰退して行ってしまうのです。

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アンコンシャス・バイアスに配慮する
1,アンコンシャス・バイアスとは
2.制作側のアンコンシャス・バイアスの問題
3.読者へのアンコンシャス・バイアスの問題
4.アンコンシャス・バイアスに配慮しないと作品・雑誌が大きく衰退する可能性がある
5.アンコンシャス・バイアスを問題にさせないために

(注)このアンコンシャス・バイアスの項目は、特定の少年マンガ雑誌を指す内容ではありません。

少年マンガ誌全般が陥りやすい表現について書いています。



1,アンコンシャス・バイアスとは

「アンコンシャス・バイアス」というのは、
無意識の偏見や思い込み
という意味の概念です。

を挙げてみます。

・事務職と聞くと女性を思い浮かべる。トラック運転手と聞くと男性を思い浮かべる

・誰でも「頑張れ」と言われると、発奮すると思う

・先生の言うことは正しいと思っている

・マスコミ報道は真実と思っている

・自分よりもっとひどい違反をしている人がいるので、自分は大丈夫だと思う

一流大学出身者は一流企業や官庁に勤める

・・・

人の脳は日常生活をうまく送って行く上で、様々な情報を集約して管理しています。

生きやすいように自分の経験則や他の情報などを統合して、
自分で解釈する
します。

その脳機能からアンコンシャス・バイアスは引き起こされると考えられています。

ある事象を見聞した時に、
「これはこんな状態・人物である可能性が高い」
などと瞬時に
類推した方が、全ての可能性を探って行くより、遥かに判断しやすく行動にも反映させやすいのです。

では以下で、なぜこのアンコンシャス・バイアスが少年マンガ作品に影響するのかを解説させて頂きます。

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2.制作側のアンコンシャス・バイアスの問題

まず、作品制作側でアンコンシャス・バイアスがどう作品に影響するのかを、例をあげてご説明させて頂きたいと思います。


仮に、ある仮定の少年マンガ雑誌のヒット作品の、制作側担当者の個性や家族構成や生育状況が以下の通りだったとします。

編集長

男性。性認識も男性。女性が好き。
五体満足で健康に問題なし。非行・犯罪歴無し。
生育家庭は、両親と弟一人。いずれも心身健康。家族仲は良い。
富裕ではないが、地方の持ち家である程度の余裕はある。
父親が仕事し母親がパートで働いて家事をして、塾に通わせてくれた。
成績優秀で地元の公立進学高校に進学後、現役で東京の一流大学に入り、難関出版社に就職し、編集長にまでなった。
社内結婚し妻と仲が良く、子供も男女二人いる。

編集担当

男性。性認識も男性。女性が好き。
五体満足で健康に問題なし。非行・犯罪歴無し。
生育家庭は、両親と妹一人。いずれも心身健康。家族仲は良い。
富裕ではないが、首都圏の分譲マンションである程度の余裕がある。
父親が仕事し母親も共働きながら家事をしてくれ、塾に通わせてくれた。
成績優秀で地元の私学進学高校に進学後、現役で東京の一流大学入り、難関出版社に就職し、編集員を行っている。
大学時代からの彼女と結婚し、子供は女が一人いる。もう一人ぐらいは欲しいと思っている。

作家

男性。性認識も男性。女性が好き。
五体満足で健康に問題なし。非行・犯罪歴無し。
生育家庭は、両親と姉一人。いずれも心身健康。家族仲は良い。
代々の土地持ちで富裕層。地方の持ち家で余裕がある。
父親が仕事し母親は専業主婦で家事をこなし、塾に通わせてくれた。
成績は優秀で、地元の私学普通科高校を卒業後、現役で東京の一流私大に進学した。幼い頃からマンガを描くことが好きで投稿を繰り返し、初めて連載を持てた。
作品がヒットしたので、地元の社長令嬢の彼女と近く結婚して、子供も何人か欲しいと思っている。

この三人はそれぞれサラリーマン・作家として成功しているので、
自分の人生は間違っていないと思っているとします。

この三人には、自分自身の
成功体験から、以下の事象が
「間違ったことではない」
無意識に共通認識している可能性が高いです。

・体の性と心の性認識は一致している
・異性が好き
・健康な方が良い
・貧乏はダメ
・非行や犯罪はダメ
・男はお金を稼いて働くものだ
・家事は母親がするものだ
・両親は揃っているものだ
・家族仲は良い方が良い
・塾は行くべきだ
・高校には行くべきだ
・浪人より現役の方が良い
・大学には行くべきだ
・学校の成績は優秀な方が良い
・東京の大学の方が良い
・持ち家の方が良い
・結婚はすべきだ
・子供は持つべきだ
・一流企業に入ったり、売れっ子作家になることは良いことだ
・・・

人は自分の成功体験を否定することは、かなり難しいものです。

つまり、この三人が揃ってアンコンシャス・バイアスを意識しないで作品を作ると、上記のような共通認識を無意識の内に
作品に反映してしまう可能性が高くなります。

具体的に書いてみます。

「主人公は五体満足で
健康で、非行や犯罪などはしない家族にも恵まれた男。

その主人公が、両親がいなくて貧乏で塾にも通えず大学に行けない、
不幸な仲間を助けながら、勉強や努力して社会人として成功し、家事の得意な綺麗な女性と結ばれる」

このように、自分の成功体験から、

・両親がいる方が幸せ
・五体満足な方が幸せ
・お金がある方が幸せ
・結婚をする方が幸せ

などと無意識の内に考え、それが作品に反映されてしまうのです。

しかもそういう設定で作品がヒットしてしまうと、ますます同じような設定を
繰り返したりします。

その結果、作品はパターン化して行きます。

例えば、両親が揃っていなくても幸せな家庭はありますし、両親が揃っていても不幸な家庭はあるはずです。

ですが、アンコンシャス・バイアスに無頓着でいると、自分の成功体験から
「幸せな家庭は両親が揃って仲が良い」
という
類型に無意識のうちに当てはめてしまうのです。

作品がパターン化して行くと、そのパターンが好みなファン以外は、離れて行きます。

特に問題になるのは1作品だけでは無く、
他の作品もパターン化してしまうことです。

編集長と編集者が、自分の成功体験から他の作者の作品にも、ヒット作品のパターンを無意識の内に当てはめてしまうのです。

そうすると、似たような設定の作品ばかりが雑誌に掲載されることになり、そのパターンが好きな読者以外は雑誌から次第に離れて行ってしまうのです。

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3.読者へのアンコンシャス・バイアスの問題

アンコンシャス・バイアスは、
読者にも影響をもたらす可能性が高いです。

こちらも
を挙げてご説明させて頂きたいと思います。


仮に、少年達に絶大な人気を誇る少年マンガ誌があったとします。読者は小中学生の男子と2割ぐらいの女子だとします。

掲載作品は、バトルものやスポーツものが中心で、恋愛ものやギャグ漫画もあります。

看板作品が2つあり、1つはバトルもの、1つはスポーツものだったとします。この2作品はメディアミックスされ、世界的ヒット作品だとします。どちらも人気が高く、少年・少女達への影響力も強いとします。

この2作品には以下のような共通点があるとします。

・主人公は、17歳の五体満足で正義感の強い男
・主人公の性認識は男で異性が好き
・主人公の容姿は背は低いが、清潔で親しみやすい
・主人公の両親は若い
・ヒロインは主人公と同い年の女性
・ヒロインは家庭でやや確執がある
・ヒロインの容姿は美しく、胸が大きい
・ヒロインの性格は、いわゆるツンデレ
・主人公とヒロインは協力して一緒に敵やライバルを倒す
・主人公とヒロインは、お互いに惹かれて行く
・敵やライバルに大金持ちで冷たい人物がいる
・主人公側が勝利するたびに、主人公達のレベルが上がり、称賛される
・裏方の人達の活躍が描かれることは余り無い
・様々な場面で、女性が家事をしている姿が描かれる
・様々な場面で、男性が家事をしている姿は描かれない
・日本を連想させる場所が舞台
・街の人の描写は、健常者や異性同士のカップルが多い
・街の人達は主に日本人的な人が多い
・舞台が都会


大ヒット作品にこれらの共通項がある場合、読者である少年・少女達は無意識の内に、上記の共通項が
正しいこと
と認識する可能性が高くなります。

例えば

「主人公は五体満足の男性で、ヒロインは容姿端麗で胸の大きな女性が良い。
バトルや試合に勝利することが良く、裏方より華々しく活躍するプレーヤーの方が良い。
都会の健常者が良く、日本人ばかりの場所が良い。」

こんなイメージです。

大ヒット作品を読むことで、こういった
イメージを無意識の内に持ってしまうことが、
「読者へのアンコンシャス・バイアスの問題」
です。

特に少年少女は
外部情報の影響を受けやすいので、自分達が知らない内に、マンガ作品の主人公達が
「正しい存在」
と思い込んでしまうのです。

そのアンコンシャス・バイアスが強くなると、次第に自分達が気に入らない作品を無意識の内に
避忌(ひき)するようになり、結果としてその雑誌の人気作品は似たような設定ばかりになって行ってしまうのです。

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4.アンコンシャス・バイアスに配慮しないと作品・雑誌が大きく衰退する可能性がある

2021年現在、国連で
SDGsが採択され多くの国や企業などが、達成に向けた努力をしています。

その目標の中に
ジェンダー平等の実現」「人や国の不平等をなくす」
というものがあります。

ここでは詳細は省きますが、
「人の多様性を尊重し、国や人種や性別や宗教やハンディの有無などによる
差別を無くす」
という理想に向かって、国や企業や市民が努力していると言っていいと思います。

そんな世相の中、少年や少女に影響力のあるマンガ雑誌の作品が、
例えば
・男性は女性を守る
・家庭で家事をするのは女性
・紛争では勝者が敗者を支配
・ヒロインは常に日の当たる男性に憧れる
・健常者だけが活躍する
・異性愛しか描かれない
などのような作品ばかりだとします。

当然、読者である少年少女達には、それらが
正しい事というアンコンシャス・バイアスが養成される可能性が高まります。

怖いのは、そういった作品を読んだ少年・少女達の中で発言力を持った人が
「あの作品から男は女を守るものだと学んだ」
などとSNSなどで発言し、「
炎上」したりすると作品や雑誌、ひいては出版社に影響が及ぶかもしれないということなのです。

特定のパターンの登場人物や物語構成ばかりの作品を人気優先で掲載することで、
「あの雑誌は、
特定の思想を植えつけようとしている」
と捉えられかねないのです。

特定の思想を植え付けようとしていると捉えられてしまうと、作品だけではなく、雑誌全体や、
会社にも世間から非常に厳しい批判が寄せられたりします。

そうなると、会社の
業績にも多大な影響を及ぼしかねません。

国を挙げて多様性を認めようとしているのに、それに反するような作品ばかりを掲載することは、かなり
大きなリスクを含んでいるのです。

自分達の作る作品や雑誌が、少年・少女達のアンコンシャス・バイアスを醸成することに意識を向けておかないと、会社全体に
深刻なダメージを受ける可能性があるのです。

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5.アンコンシャス・バイアスを問題にさせないために

最後に、アンコンシャス・バイアスを問題にさせないための、管理人の
勝手な考えを書かせて頂きます。



1.編集者や作家への教育
2.繊細な作品設定
3.偏らない物語進行
4.作品群を偏らせない
5.編集者・作者の発信・発言をチェック


1.編集者や作家への教育

アンコンシャス・バイアスを問題化させないための対策で最も
基本となるのは、編集者やマンガ作家への教育です。

アンコンシャス・バイアスとはどんなものか、どんな問題を起こす可能性があるのか、などを作品に関わる前に教育しておくのです。

いくらアンコンシャス・バイアスに気をつけろと言われても、それがどんなものか分からなければ、対処のしようがありません。

早い段階で、アンコンシャス・バイアスについて知っておくのが、アンコンシャス・バイアスを問題化させない最も大切な対策となります。

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2.繊細な作品設定

アンコンシャス・バイアスを問題化させない対策は、
作品設定から始めておくと効果的だと管理人は考えます。

主人公はもちろん登場人物達の人物設定や、作品世界の設定をする際に、あらかじめアンコンシャス・バイアスを意識して設定しておくのです。

例えば、主人公の家庭設定は単に
「両親揃っていて、女性が家事をする家庭が
現実に多いから」
などと考えてその通りの設定をするのではなく、
「主人公の父親は、父親が早く亡くなり両親揃った家庭に憧れがあって結婚した。母親は自分の母親が家事を全くせず家庭を顧みなかったので、自分が家庭を持ったら家事をしたいと思っていた」
という設定をして、
偶然両親が揃って、しかも母親が主に家事をしている家庭」
と設定しておくのです。

他の家族が登場する場合も、それぞれ
丁寧に家族構成を設定しておくのです。

作品世界の設定も、
例えば架空の地球的な世界だとしても、人種を黄色人種を多くするのではなく、他の人種も違和感の無いように混在させておくといった設定にしておくのです。

また、味方にある人種ばかり多く、敵にある人種ばかり多いなどの、
偏見ともとられない設定は避けた方が良いと思われます。

こうした丁寧で
繊細な作品設定は、読者からの設定への疑問にしっかり説明できますし、作品そのものも深めることができるので、一石二鳥だと考えられます。

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3.偏らない物語進行

作品設定と共に重要なのが、物語の進行自体を偏らせないことだと思います。

例えば
「男の主人公が勝ち続けることで、ヒロインにもモテて、自分も成長し、周囲の状況も良くなって行く」
という
基本的な物語進行があったとします。

物語進行がこのパターンばかりになると、読者は
・男が勝つことが良い
・目立って活躍した方が良い
・勝つことでヒロインにモテる
・勝つことで成長する
・・・などとアンコンシャス・バイアスを持ってしまう可能性があります。

しかも他の作品も同じパターンだと、ますますアンコンシャス・バイアスは助長される可能性が高くなります。

そこで、敢えて物語進行を変えてみるのです。

例えば
・主人公が負けて大いに学ぶ
裏方の活躍を描く
・ヒロインは活躍する主人公とは別の人と仲良くなる
・仲間を失うことで打撃を受ける
・・・などのように、敢えて物語を
変調させるのです。

基本は主人公が勝って行く物語進行であっても、敢えてそこに
陰影をつけて行くのです。

そうすることにより、アンコンシャス;バイアスを助長する可能性が減りますし、物語が変調した上に陰影ができるので、
マンネリ化阻止にもつながり、なおかつ物語を深めることにつながります。

物語進行を偏らせないことは、実は様々なメリットのある
有益な方法でもあるのです。

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4.作品群を偏らせない

仮にある少年雑誌の作品が、どの作品も男の主人公が勝ってヒロインにモテる物語だった場合、読者は
・主人公は男
・勝つのが良い
・勝てばヒロインにモテる
などのアンコンシャス・バイアスを持ってしまう可能性が高くなります。

そうならないためには、作品群も
バラバラである方が好ましいと考えられます。

例えば
・王道のバトル作品とスポーツ作品
女性が主人公の恋愛作品
・ギャグ作品
・地味な裏方が主人公の心温まるヒューマン作品
・実録作品
・・・などのように
バラエティ豊かにした方がアンコンシャス・バイアス対策としては有効だと考えられます。

そのためには、人気だけを優先させるのでなく、特定の枠を設けて地味な作品を掲載するとか、敢えて
海外の作家作品を掲載するなど、編集側の工夫が必要だと思われます。

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5.編集者・作者の発信・発言をチェック

編集者・作者も超人ではなく、普通の人なので、当然それぞれの
信条・主張・嗜好などがあります。

それは当たり前なのですが、中には公に発信・発言するとアンコンシャス・バイアスを助長するだけではなく、
人間性を疑われれる信条や主張を持っている人もいるかもしれません。

例えば
・特定の国や人種への差別的偏見
・女性蔑視的な観念
・性的少数者への偏見
・過激な政治・宗教思想
などです。

絶大な人気がある作品の作家が、そういった信条や主張を
SNSなどで発信したりすると、受け取った読者などに
「あれだけの作品の作家が言うんだから正しいことだ」
などと、強いアンコンシャス・バイアスを植えつけかねません。

公式アカウントなどは出版社側がチェックできますが、個人で勝手に発信は発言するのは、阻止するのが難しかったりします。

だからと言って出版社が放っておくと、
「あんな思想を持った作家に描かせている」
といった批判が起こり、発信・発言の内容によっては不買運動にもつながり、雑誌どころか
会社全体に深刻な影響を与えかねません。

なので出版社側としては、まずSNSや動画配信サイトなどへの、発信に関して行ってはならないことを
教えておく必要があります。

違反した場合の罰則も
契約しておくと良いかもしれません。

さらに、編集者や作家の発信や発言を
様々な場面でよくチェックしておき、危険だなと思ったらあらかじめ指導しておく必要もあるかもしれません。

それでも不安だったら、異動させるとか契約を解除するなどの手を先にうっておく必要があるかもしれません。

現在は一度発信・発言したらすぐに
拡散され、収拾は容易ではありません。

危険と感じたら、いくら能力があっても早めに絶縁しておく方が、結局一番の
リスクヘッジになるのです。

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このページの要約
少年ジャンプの部数全盛期に比べ、少年達の娯楽は増えてマンガ雑誌全体の人気が落ちている。その上インターネットでの批判もしやすくなり、衰退原因は多様化し、作品は衰退しやすくなっている。

セクシーシーンは作品にとって、衰退要素の方が大きいとも考えられる。

ギャグ作品がシリアス作品に変わるというような作風の変化は、作品を衰退させる可能性が高い。

作品はフィクションだが、余りに現実とギャップがあると、作品は衰退する。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に配慮してマンガ雑誌・作品を作って行かないと、読者の予期しない反応により、大きな衰退が起こる可能性がある。

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